星の航海図

星の航海図

cotomonoの今村さんとの合作で「星の航海図」というシルクスクリーン作品を作りました。素数やフィボナッチ数列やらを盛り込んで曼荼羅みたいなデザインになりました。

8という数字の形状がインフィニティ∞も表しているということで1234567890を8をベースに作っています。

発泡白インクで印刷してエンボスによって表現しています。遠くから見たら白にしか見えませんが近づいて行くと柄が確認できます。

星と素数

ある古い物語によると、素数は夜空に光る星のような存在だとされている。
遠く離れた星と星、光と光とを糸で結び星座を作るようなことが素数に隠されている。
その星座はまるで「星の航海図」のようであり、それを使う者にとっての「人生の航海図」でもある。
しかし誰もがその航海図を手にすることができるわけではなく、星使いと呼ばれる者だけが、その航海図を読み解くことができるとされてきた。
星使いになるためにはそれなりの資質が必要とされる。いくら日々の研鑽を積んだとしてもいくら幸運に恵まれたとしても星と星とを結ぶ素数との調和を計り、まるでハーモニーを奏でるかのような星使いになれるわけではない。
星を知ることは、それを使う人、すなわち自らを知ること。
そう、大切なことは星との距離をみること。
星はいつも同じ場所で輝きを放っているわけではなく、自らと距離を絶え間なく変化させている。
星が近づいた時はじっと耳を傾け、その信号を読み取り、星が遠ざかっている時は追いかけず、また自ら歩み寄ってくる時をじっと待つこと。まるで素数が宇宙の法則に促され、その距離を近づけたり遠ざけたりするように。
古来から、星と素数は密接なを持ってきた。一説によると星の起源は人の手によって育まれてきた作物の一つであったとされている。
結んだ星の実を収穫し、それを漆黒の空に放つという内容の古い唄がある限られた場所に置いては末だ種まきの唄として歌い継がれている。
星の栽培にはいくつかの条件が求められた、とその古い物語には記されている。
それは土に多くの素数が含まれていることが肝要で、この土に含まれた素数が星の源になると物語には記されていた。
冬に撒かれた星の種は雪解けの季節になると一枚の葉が土から顔を出す。夏を迎え、秋の足音が近づく頃、約三十センチほどまで広がった一枚の葉はまるでもとの種に帰っていくかのように端から丸まっていき、最後的には手のひらに収まるほどまで小さくなる。
これが星の実とされた。
これらの古い言い伝えから二つの仮説が立てられた。
一つは星の葉が一枚しか育たないのは、素数と隣り合わせとされてきた「一」という数字が何かしらの鍵とされていること。
もうひとつは星の葉が丸みを帯びる時に発生する音が、星それぞれに与えられる固有の周波数であるというものだ。星の周波数を読み解くことは星との調和を意味し、冬の夜空に凛と輝くポーラスタの如き素数を理解することでもある。そして、それはこの宇宙の成り立ち全てにおけるものとの調和を成し、いずれ自らを知ることへと繋がっていく。
かつては誰もが星使いであった。
そしてそれはしっかりと今に受け継がれている。
人々が数字や図形に敬意を持って接したとき、遠い記憶を思い出すかのように少しだけ胸が温かくなるだろう。
それは星の温もりであり、素数の温もりであり、開かれる時を持つの大切な鍵である。

只松靖浩+Cotomono